2月下旬 それから

それから

国民生活金融公庫に行ってみた。
というのも商工会議所で相談を受けてくれた人がはやく顔を出しなさいと電話で言うからだ。
まだそんな時期じゃないと思っていたが相談だけでもしてみろというので行く事にした。
手探り状態の時は何でも真に受けてそのまま実行して学べ。俺の言葉。
スーツを着て行ってみた。少しアレンジ。でも自転車。

いろいろな融資制度を教えてくれた。
どれも俺には無理な融資制度だ。保証人の有無?
無。
あるわけねえ。
恥かきっ子の俺のオヤジはとっくに日本人男性の平均寿命を超えてるし。
かといってボケてるわけじゃない。俺の提案には必ず完璧なノーと言う答えを持っている。
3人いる兄貴、絶対無理、他人以上に無理。
完璧な嫁さんがいて完璧な子供達がいる。彼らはイサオおじちゃんは八百屋さんで働くおじさんと思っている。
俺が飲み屋をやっている事は島田家の最高機密になっているらしい。
みんな知らない。俺が何を生業にしているか。理由?
みんなに迷惑かけるかもしれないから。それだけで俺は正月に口数が減る。
俺はそんなつもりはことさらないが気にする人はいるだろう。それだけ、自分は語れない。

「保証人のあてはありませんしそのつもりはありません。」
もう一ちょだめもとで言ってみた。
「でも自分は東京都知事の推薦をもらった飲食店です。」
答えはこうだ。「我々は金融機関でありますので島田さんが返済可能かどうかを判断するのです。推薦に関しては特に考慮の材料になりません。」

中略

俺はパンフレットを指差して(またパンフレットだよ、どこ行ってもそうだ。人は紙に印刷されている事には従順だ)
 「でも、ここに保証人、担保が必要のない融資制度があるじゃないですか。」
「これは法人向け融資なんですよ。法人ですと島田さん自身がこの法人の保証人になれるのですよ。法人登記してみてはどうですか?」
チンプンカンプンだぜ。出来るか!
 「じゃあ、この融資は?」
「これは不測の事態におちいった事業者向けの融資制度です。今多いのが原油価格の上昇に影響を多大に受けている事業者です。運送業など・・・」
不測の事態だと!この商売初めて不測の事態の連続だ。
通りの手前に同業者が出来るたびに何回も店は潰れかけた、俺は何も言わなかった誰の力も借りなかった、おかげで人一倍努力できたぜ!ちくしょー!OKならこの制度は?
「この制度はこれから事業を始める人、もしくは始めてから2年以内の人に向けての融資制度なんです。島田さんの場合はもう4年を超えてますし。」
 「そんなバカな、2年以内って。4年やった俺の2年前なんて今でもぶん殴ってやりたいぐらいのボンクラでしたよ。」
「島田さん、おっしゃりたい事はよくわかります。2年しか経験のない事業者と4年の経験をもった島田さんではどちらが信用できるかと言ったら答えは明白です。でもこれは国が決めた制度なんです。我々は金融機関ですが国が決めた制度にのっとった融資しか出来ないのです。これはそういう制度なんです。」
 そう言われたらぐうの音も出ない。
帰ることにした。
 
外に出ると辺りはもう暗くて。
今日店を開けるための買い物のメモを見た。早く帰んなきゃ。

少し乱れたスーツで自転車に乗って俺は思った。
また思いを胸にしまいこまなきゃと。
また。

少し涙が出た。

 
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  by kouenji-bourbon | 2007-11-13 06:38

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