4月事業計画書3

まだまだ終わらない。
大雨に助けられて、誰も店に訪れない。
終わった。
美しい。完璧な事業計画書だ。
店を開けよう。
12時半をまわっていた。

一人の若い男が入ってきた。若くて小柄、マイナスのオーラを全く感じない。
「この店で一番高いバーボン下さい。」
 「お前さんにゃ10年はえーよ!」思ったことがそのままダイレクトに言葉に出る、最近のいけない癖だ。「君はこの店初めてだろ、一番高いのは本当に高いから俺が選んであげるから何かヒントをくれ。どんな男になりたいとか、どっから来たとか、今の気分とか?」
「さっき東京に出てきたばかりです。ミュージシャンになりたくて。今の気分はドキドキですね。」素直だ。
 「東京に出てきたばかりでこの店に来たの?ようこそいらっしゃいました。仕事は?」
「これからです。」
 「じゃあ、俺がいい仕事を紹介してあげるよ。きついけど。そこに行けばミュージシャンの仲間もすぐ出来るぞ。」
ソイツはその日のうちに連絡をとって、其処で働く事になった。

素直なソイツにはよかったらウチで働けばと言おうとしたが止めておいた。
なぜなら事業計画書を書きながら思ったことは、これから俺は多少のウソも吐くだろうし帳尻の合わないハッタリもかますだろう。今まで一番避けていたことだ。
でも気付いた事は、そのくらいじゃないとスタートもしないし生き残れんなってことだった。
東京で最初に出会った人間がそんな状態の俺じゃか可愛そ過ぎる。

この大雨の中誰かがこの店に来て、この事業計画書を仕上げるのを止めてくれるのを待っていたかもしれない。書きながら自分が同じじゃいられない事に怯えながら書いていた。

ソイツは今でも抱瓶で働いている。
結構な人気者だ。たまにはウチにも飲みに来てくれる。素晴らしい事だ。
その時ソイツに出した酒を思い出そうとしているが全く思い出せない。
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  by kouenji-bourbon | 2008-02-10 20:56

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