4月 事業計画書2

 それから、しばらくして。
人が来た。客ではなさそうだ。やけに腰が低い。しらふだ。この時間にしらふで来る客はこの店にはいない。
「失礼します。自分こういうものです。」名刺。遠くて見えない。「ブラウンフォーマンです。」
 「ブラウンフォーマン?聞いたことあるな。アーリータイムスだ。お前さん営業か。」
「自分はジャックダニエルです。」
 「そうかー。お前さんの営業に付き合うから、俺の営業に付き合え。何を飲む?って言いたいトコだけど、見ての通り俺は営業できる状態じゃない。忙しいんで手短に頼むわ。」店の床は重要書類で埋まり、その中心に俺が座ってた。
「自分はジャックダニエルの販売促進のために~~なんたらかんたら~~ジャックガールというキャンペーンガールを、、、」
 「分かった!俺は君が来るのを待っていた。こっちに来て座りなさい。お茶も出せる状況じゃないが。君は若いその書類を飛び越えて来い。助走はいらないだろ。こっちだ!」
「そこですか?」
 「おい!その紙を踏むな!それは平成17年度の確定申告書だ。俺にとっては思い出深いものだ。」
「すみません!!ごめんなさい!」
 「めんどくせえ!普通にここに来なさい。踏んでいいから!」
長身で足長の彼はうまい事またいで俺の正面の席に着いた。
 「やっと来やがったなジャックダニエル。俺の事をよくも今まで無視してくれたな。大丈夫だ、怒ってないからこの4年間で無視される事にはトコトン馴れちまったから。」
「はい。。。」
 「お前さんの話を聞くから、その前に俺の話を聞け。」
 「2年前だ。俺はなぜ自分の店にネオンがないのか気になりだした。同業者に聞いて回った。そしたら酒の営業さんがくれると言うじゃねえか。ウチに営業なんか来た事なかった。電話したよ、方々に。俺はコレコレこう言うものでバーボンのネオンが欲しいと。そうしたらジャックダニエルに行き着いた。その答えは俺には冷酷なものだった。ジャックダニエルを2ケース買ってくれだ。ほぼ定価で。まけてくれと言ったら、6本サービスで付いて来た。合計30本もジャックが来たよ。6万出費。でかかったーあの頃の俺にはでかい出費だった。死ぬかと思った。」
「そーなんですか!ありがとうございます!」
 「おい、話しはこれで終わりじゃない。ネオンが届いた。俺は得意げだった。お客にも言われたよ店が凄くおしゃれになったねって。俺は満足だった。お客も褒めてくれて。あのネオンは俺の自慢だった。俺も得意になって言ったよ。ジャックダニエルがウチに置きたいって言うからさーなんてうウソ言ってな。お客も言ってくれたよ、バーボンハウスだもんねここって、凄いねって。」
 「でもその一週間後だ。その当時のバイトが掃除中にネオンを倒して、割っちまった。直らなかったよ。でもその時俺は目が覚めたよ。この30本早く売らなきゃ。お金にしなきゃって。その当時の俺にとっちゃ自殺行為だ。30本のウイスキーの在庫なんて。」
「そーですか。」
 「まだ話は終わらない。俺がどおやってその大量のジャックダニエルを売ったか!これを聞いたらお前泣くぞ。話すぞ。」
「どうぞ。。。」
 「バッタもんのジャックダニエルのTシャツを500円で20枚買ってきてキャンペーンと称してボトルを入れてくれた人にプレゼントしながらなんとか売ったんだ。」
「そうなんですか!ありがとうございます!」
 「お客は喜んでくれたよ。ボトルを入れてTシャツもらえるなんて、さすがバーボンハウスですねって。俺もそーだろジャックがウチを応援してくれてるんだよなんてウソ言ってな。」
 「忘れられないのが、そのTシャツにはJACK LIVE HEREって書いてあったよ。でもそのとき俺は死にそうだったよ!」
「すみません。。。そのコピーまだ使ってます。」
 「まあいい。俺は知ってるぞ。ジャックダニエルが半裸のねーちゃんを店に派遣して、ジャックダニエルを売りまくっているのを。そして高円寺のいくつかの店でもやっているのを。」
「そー言われてしまうとそうなんですけど、すみません宣伝活動の一環なんです。バーボンハウスはダメですかそー言うのは?」
 「ぜひお願いします!」即答した。「ずーと君が来るのを待ってたんだよ。大丈夫!怒ってないから、無視されるのは慣れてるから俺。やっと来てくれたな!そっちから!そーだよなーだってバーボンハウスだもんなここ。」

 営業の男は店を見渡し始めた。値踏みが始まった。慣れてるよそれも。
 「10坪ないよ。席は16席低度。駅からは遠いよ。宣伝効果は薄いか?」
「そうですねー。」
 「判ってるよそれも、今まで散々言われてきたから。だから俺は間抜けな街頭放送をかけて自分で宣伝してるんだ。男ならバーボンを飲め!って。ケンタッキー州知事から表彰されたいくらいだ。でもそれを聞いてお前さん来たんだろ?ところが意外と小さな店だった。お前さんにとってそれは計算違いかもしれないが、俺が起こしたアクションでここまで来てくれた人を俺はむげには扱わない。何も心配しないでジャックガールを派遣しなさい。結果を出すのは俺の仕事だから。」
「わかりました。3日後です。」
 「明らかにキャンセルが出て俺の所に来たな。まあいいや。」
「ところで、何をしていたんですか?今まで。」
 「2店舗目の事業計画書を書いていたの。ちょっとは評価上がった?」
最近ハッタリがうまくなってきて自分が嫌いになりそうになる。店をやる前の八百屋のころの自分みたいだ。修正が必要だ。
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  by kouenji-bourbon | 2008-02-10 20:47

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